俺が『おはよう』と言えば、昔は『おはようございます』と返してくれた。
でも今は『他の人にも言うんですか?』とやんわりと笑う。冷たい口調で。

正直、怖い。
でもさ無視するのも嫌なんだよね。
てか無視したら絶対に、俺のこと嫌いになりました?と泣きそうな顔をして、聞いてくるに違いない。
それはそれで怖い。
結局俺はずるずると奈倉千秋という一人の生徒に接し続けた。

結果はこの様である。


「ね、先生。俺は、俺にはね、貴方しかいないんです。だから、先生にも俺しかいないと駄目じゃないですか? 不平等だと思いません?」

「思わない」

「どうしてですか? 先生は本当に不思議な人ですね。でもそういうところも俺は好きですよ。ただね、俺は貴方が他の人の目に触れるのが耐えられない。耐えられないのですよ。先生の目に俺以外の人がうつるのも嫌ですね!」

「何がだよ。俺は教師だから、生徒にはみんな平等だろ?」

「俺にとったら先生は特別ですよ」

奈倉はにっこり笑う。とても冷たい瞳をして笑う。

「だったら、俺はお前を生徒だと思っている。それに変わりはない」






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