俺と奈倉が出会ったのは何時だっただろうか。
正直俺は覚えていない。
ただ奈倉千秋という人間を認識したのは、中間テストのことだった。
ほぼ満点に近い成績を叩きだして奈倉は平然としていた。
その姿を見た時、俺はこんな奴も世の中にはいるのだなと感心した。

自分の能力を自慢することもない。
自分の能力に溺れることもない。

むしろ、何にも興味がないような…

寂しさを感じる瞳をしていた。
まるでこの世に『愛』が存在することを知らないような瞳だった。

奈倉は顔もスタイルも頭も運動神経もいい。
女の子には大人気だ。
ちょっと無愛想で変なところがある奴だが、女の子たちは彼のそういうところも好きらしい。
母性本能をくすぐられるんだと。
よくわからん。
俺にとったら、ただ、人間になれていないようにしか見えなかった。

だから、俺は奈倉に対して好意的に接した。
奈倉の瞳に輝きが生まれたらいいのにと、担任として思った。願った。
だが、それがそもそもの間違いだったのかもしれない。


『俺以外の人とどうして話すんですか?』


やんわりと笑顔で、でも、詰め寄るような言い方で奈倉は言った。






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