「あのさ、中沢。たぶん、中沢が感じたそれって、俺が中沢に少し似ているからだと思う。俺も、ずっと同じような日々を送ってきた。高校に入れば何か変わるって思って、家から遠いここに通うことにした。知らない世界にきたら、何かが変わると思った。簡単に、そう思った。でも、俺は中沢を見つけて思った。いや、気がついたんだ」
「俺、を、見て?」
「そう。わかったんだ。俺、自分は何も変わらずにいるのに、世界に変化を求めた。でもさ、結局は自分が変わらないことには何も変わらないんじゃないかって。うん、中沢を見て入学式の日、思った。俺は何も変われていないって、ずっとこうして生きていくことしかできないのかなって」
その他大勢に紛れ込んで、誰とも区別されないような人生を送ること。誰からも批判されないけど、賛美もされないような生き方。
「…紀田、そんな顔しないで」
「え? どんな…顔して」
「寂しそうな顔していた」
「気のせいだと思うよ」
「気のせいだと思わない」
「どうして、中沢にそんなことわかるんだよ、俺のことなんて」
誰もわからない。わかるわけがない。俺が嘘をついても誰も気がつかない。ここは、そんな世界だ。




「好きだから、紀田のこと」








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