しばらく廊下で彼に両手を握られてぶんぶんと上下に振られた後、落ち着くと、俺たちは教室に入った。で、今は、彼が窓際最後尾で、俺がその一つ前の席に座っている状態。
俺はかなり緊張している、というより、戸惑っていた。
ずっと遠くの人だと思っていた人が、今俺の目の前で嬉しそうに笑っている。しかも、今まで見たこともない嬉しそうな顔で笑っている。
寂しそうな顔、じゃなくなっている。
「よかった…」
思ったことが言葉になってしまう。
「いつも、何処か寂しそうだったから、気になっていたんだ」
「あ、りがとう…」
彼は上目遣いに俺を見つめる。
少しドキッとした。少しドキッとしたのはきっと絶対に俺が今まで長身金髪美男子に上目遣いされたことがなかったせいだと思う。そう思うことにする。

入学式の日から彼は目立っていた。
何が一番かっていうと、やっぱり金髪だった。とても綺麗な金髪が黒い頭の中に一つ交じっていた。別に校則で髪の毛を染めたら駄目だという決まりはないけど、さすがに入学式の日から、しかも単独でそんな驚くほどの金髪で学校に来るなんてすごいと俺は感心した。憧れにも似たような感情だった。ただいつも人並みに紛れこんでいる俺とは違う世界の人なのだと。

「あの気になっていたんだけど、地毛?」
この機会に聞いてしまおうと俺は勇気を出して尋ねた。すると彼はやっぱり瞳をキラキラさせて答えてくれた。
「これか、これは染めたんだ。金髪って不良みたいだなって思ってさ」
「不良…みたいって、そうかな…」






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