放課後になると、俺は適当な嘘をついて、友達と別れ、あの教室に向かった。察しはついているつもりだ。人気者は『寂しんじゃないかな?』と書くってことは、きっと、書いてくれた人は俺と同じ気持ちでいるんだ。だったら仲良くなれそうだ。きっとその人なら、人気者の彼と仲良くなれそうだ。彼の寂しそうな顔を、やめさせてくれるかもしれない。
彼を笑顔にしてくれるかもしれない。
俺はどうしてかそれを想像すると嬉しくて、廊下を走った。
でも、やっと着いた例の教室の前で俺は足をとめて、隠れてしまう。

夕日色に染まった教室の窓側最後尾。
その机を愛おしそうに右手で触れている、
寂しい瞳の金髪美男子。
俺は固まった。
まさか、計算外だ。
勝手な妄想だけど、彼ならばクラスの真ん中に座っているイメージがあったから、窓際最後尾、今日俺がここで待ち合わせをしようと提案した相手は彼じゃないと思っていた。それに、これじゃ、彼の友達になってくれそうな候補を失ったことになる。大変がっかりだ。
「あ、紀田?」
「へ?」
急に教室から顔を出して、彼は俺を見てそう言った。俺の名前、どうして知っているんだろう。ていうか、近くで見ると余計に綺麗な顔をしている。
「紀田、やっぱりそうか、紀田だったんだ」
「え?」
とっても嬉しそうに、まるで飼い主の帰宅に喜ぶ犬のように彼は俺を前にしてはしゃいだ。はしゃぎながら、俺の両手をとるとニコッリと彼は笑う。
俺はどうしたらいいのかわからなかった。ただ、彼が今寂しそうな顔をしないから、嬉しいと思うけども。






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