「紀田、さっきの授業さ、何をニヤニヤしてたんだよ?」
「え?」
授業が終わって、移動教室を後にすると友達に突っ込まれた。俺は少し動揺した。気づかれたくないと思ったのかもしれない。
「ああ、昨日見たテレビがさ、面白かったなーと思いだしたんだよ」
俺は平気で嘘を言う。
「思い出し笑いってエロいんだぜ…っていうかそれって何さ?」
それはさ…と俺は昨日のテレビの話をはじめた。そう、宇宙人に会ったことがあるとか言っていた人のインタビューの話。あれは面白かった。それは本当の話。

だけど、俺の心はここになかった。
友達と昨日のテレビの話をしながら、さっきの机の文字ばかり思い出す。

どうしてだろう、顔も知らないのに、たったのあれだけの関係がすごく楽しかった。一体誰が、俺と机で文字の会話だなんてへんてこなことに付き合ってくれたのだろう。
そう思うと、俺は書かずに、いられなかった。
もちろん、スルーされることは覚悟の上だ。

『よかったら、放課後、ここに来てください』

そう書いてきた。正直、俺自身どうしてそんなことしたのかわからない。でも俺は文字の相手に会ってみたいと思った。
だいたい察しはついているんだ。短い文字の文通をしてくれたのは三組の誰か。だって、あの教室は、俺たち二組と三組しかつかわないらしいから。先生から聞いた。でも、あの席に座っている人のことは、聞けなかった。
聞かなくてもわかっているつもりだった。きっと、あの文字は…






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