「ひでぇよ、哲也、俺は本気なんだからな!」

脱ぎかけた制服を戻しながら裕也はブツブツとぼやいた。

「だいたいお前はなんで、そうさわやかに笑っていられるんだよ。俺ばっかり必死で馬鹿みたいじゃないか!」

「馬鹿みたいって、裕也は馬鹿じゃなかったけ?」

「俺は馬鹿じゃない、アホなんだ」

自信満々に裕也は人目も気にすることなく大きな声でそう言い切った。
やっぱり裕也は面白い。
何もかも突拍子がなくて、先の行動が読めなくて、楽しい。

「だいたい、なんだよ、哲也は、陸上の大会があるじゃないか! 雨降ったら困るのお前だろ! それにな、それに、それに…っ」

「……雨降っても、延期するだけだぞ、特に困らない」

どうしよう、このチャラ男ファッション。
俺の陸上の大会なんかで、必死になって…

「そういうものなのか?」

俺、大会のこととかよくわからないから、てっきり…と裕也は苦笑いした。

駄目だ無性に抱きしめたい。
だけど俺は素直じゃないから、さわやかに格好つけた。


「ま、気持ちだけは頂いとくよ、裕也」






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