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「…で、俺は氷上さんに伝えておきます。俺は、氷上さんが自分に自信がなくて、すぐに不安になるみたいですが、充分に貴方は可愛いんで、本当に可愛いんで、自信持ってください。俺はきっと一生貴方を嫌うこともないですよ?」
「でも…」
「またそうやって、不安がりますか? 何か、誰かに裏切られたんですか? どうしてそんなにも人の心は移ろいやすいなんて言うんですか? 思うんですか?」
「それは…その…」
俺は戸惑った。俺の母さんがそうだからなんて今、言ってもいいのか。
あんな暗い話をしてもいいのか…
「ごめんなさい。無理しないでください。大丈夫です。氷上さんのペースでいいですよ? いつか、俺に言えそうになったら言ってください。聞きます」
「あ、ありがとう。こんな俺なのに…」
「ああーっもう、また、卑下した。氷上さん、俺は確かに氷上さんを好きになりました。でも氷上さん、もっと自分に自信持ってください」
「自信って…俺そんなに…ない?」
「ない、です。ないですよ。でも、それでも俺は結局好きなんですよね。覚えてますか? て、覚えてないですよね。俺が喧嘩してボロボロになって、路地裏でうずくまっていたら、心配して、ハンカチくれたじゃないですか?」
「え…?」
「嬉しかったんです。俺のこと、心配してくれる人がいるって。親身になってもらえたなんて。いつも、俺、自分に自信がなくて、不安になると、人のこと殴ってそれでやりすごしていたんで…」
はじめてでしたよ?
そう言って西沢はほほ笑む。
「自信がつきました」
「自信が…?」
「はい。俺はそれなりに価値があるんだって思えました。そして、今はとっても価値がある人間になれたんです」
どうしてだか、わかりますか、と西沢は言った。
俺は首を横に振った。
「氷上さんが、馬鹿みたいに俺のこと、愛してくれるから…」
「…ぁ」
「どうされたんですか?」
「その、俺にも、価値が、あったりしたのかなって…思って」
「俺大好きですよ」
「西沢っ」
「ちょっと、氷上さん、そんなに抱きつかれたら、俺…」
「…いいよ、西沢」
「嫌です、ダメです。俺、氷上さんのこと、大切にしようと思ったんです。なのに、まだ付き合って間もないのにそんなのっておかしくないですか?」
「俺は、西沢が俺のことをそうやって思ってくれることが嬉しいから、いいよ?」
ぎゅっと俺は西沢に体を寄せた。
「そのかわりね、ずっと、そばにいてね」
「言われなくても付きまといますよ」
「えー」
俺は笑った。幸せで、幸せで仕方なかった。
西沢は切羽詰まったような顔をして、ゆっくりと俺との距離を測る。

もう、不安になんてなれないかもしれないな。
西沢は俺を抱きながら、
「俺が貴方を大好きだって一生かけて証明します」
とか、言うからさ。
本当に、困った。
迷惑だ。
俺の人生、西沢とともにあるみたいでさ。

それがたまらなく幸せで。

西沢も俺に迷惑って言ったの、こんな気持ちだったのかなって考えたら、もう、どうしたらいいのかわからない。
するとさ、西沢はこう言ってくれたよ。
ずっと、そばにいてくださいと。
ああ、それなら俺にもできる。



不安になれないくらい、
君が好きです。







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