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「だから、俺がそんな顔させなければいいと思った」
河野さんは堅そうな口をゆっくりと動かすと、少し優しく説明したくれた。
どうやら、河野さんは本当にいい人みたいで、俺が誰かに囲まれて苛められていると可哀相で助けてくれていたらしい。でもそんな俺に上手く言葉がかけられない自分にいらいらしていたらしい。なんだ、嫌われてなかった。
「香湖、理解したか?」
「はい、河野さんってとっても優しい方なんですね!」
俺なんかのために気を使ってくれていたなんて…。
しかもそれに気がつくこともなく、構わないでくださいなんて言った俺に。

「にぶい、告白だってわかれ!」

「………え?」
河野さん、今なんて言っただろう。聞き間違いか。

「一目惚れだったとか言ったら笑うか?」

とても澄んだ声で、河野さんは俺を見つめる。やばいよ、顔が赤くなっていくのが自分でもわかる。
ここは男同士で何を言っているのですか、と返すのが筋なのかもしれないけど、俺はもうそれが冗談には聞こえなかった。

「あの、俺も一目惚れしました!」
別に今さらなんて思われてもいい。そう思って告白したら、河野さんは俺を強く抱きしめた。
「あの…」
冗談じゃないかったのですか? と俺が聞こうとしたら河野さんは「本気だ」と言って、俺にキスをした。俺はそれが嬉しくて、河野さんにされるがまま、大人の階段を上ったのだった。





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