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俺はどうしていいのか、わからないくらいに、幸せでした。
「…丹羽くん?」
「どうされましたか?」
部長はおずおずと俺を見つめました。
「手が、透けて…」
「ああ」
俺は淡々と頷きました。
いつものことです。
タイムトラベルまがいから、元の世界へ戻るときに、こうして俺は透けて消えていくのです。
この感覚にはいまだになれないのですが、どうしてでしょう。
今回はそんなにも悲しくないです。
そうです。
俺、知っているんです。
また、貴方に出会えると。
「俺、もう、ここにはいられないようです。さようならです」
「え、なんで、そばに、いてよ」
「泣かないでください。俺はいつもあなたのとなりにいます。きっとまた会えます。あなたは俺のことを忘れていしまうみたいですが、それでも、いつか、また会えます。だから、よかったら、俺のことずっと好きでいて下さいよ。俺も、好きですから」
部長は泣いておられました。
俺は何もできずに手をのばしました。
「丹羽くん」
ありがとう。
どうしてかわからないくらい、優しくしてくれて。
部長はそう言われました。
だから、
「すべては好きにつながります」
と俺は遠まわしに告白をして、元の世界にもどることにしました。
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