すべては好きにつながる
誰もいないオフィスにまた二人きりになりました。
俺は嬉しそうにするあなたに少しばかり不満を抱きます。
「厳しくしたのも、全部、俺のためだったんだって。俺、強くなれた気がするよ。たいていのことには負けない気もするし、今まで、誤解して泣いてばかりいたのが、失礼に感じるよ」
「そうですか…」
俺は考えました。
ここにタイムトラベルもどきをしてきた理由はなんなのか。
全くわかりません。
あなたのことを救うためじゃないかとも思っていたんですが、どうやら、俺は何もしていなくても、あなたは自分の力で、道を切り開かれたようでした。
俺って、必要ないのかもしれません。
「丹羽くん」
「はい?」
「ありがとう」
「え?」
俺は部長にお礼を言われたのが全くもって理解できませんでした。
俺は何もしていませんでした。
此処にいたってしかたない人間に思えてしかたなかったのです。
なのに、あなたは俺の手を取ると、笑いました。
俺なんかに笑いかけてくれました。
「丹羽くんのおかげだよ」
「俺、何もしていません」
「そばにいてくれた」
「え?」
「励ましてくれた」
丹羽くんがいなかったら、俺、何もわからないまま辛い想いをしたまま、ここから逃げることしかできなかったと思う。
頑張って、今日を迎えられたのは丹羽くんのおかげだよ。
本当に、ありがとう。
あなたはそう言われました。
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