逃げないで下さい
=小池side=
もう、限界だと思ったんだ。
俺は耐えられないと思ったんだ。
あの時、誰も助けてはくれなかった。
俺はひとりぼっちだと思っていたんだ。
「俺はあなたの味方です」
そう言って、丹羽くんは俺を抱きしめてくれた。
ほっとした。
それと同時に、どうしていままで一人だなんて思っていたんだろうか、と悲しくなった。
いつも、丹羽くんは見ていてくれた気がした。
「うん。ありがとう」
涙が流れた。
幸せだった。
嬉しくても、涙がでるんだと、俺は知らなかった。
「うん。俺頑張る。だから、ずっとそばにいてほしい」
俺は一人じゃない。
そう思えたのなら、少しは頑張れる気がした。
でも、丹羽くんは困ったように笑った。
「できる限りはあなたのそばにいますよ」
「ありがと」
俺はこの時、幸せだった。
俺はたぶん丹羽くんのことが好きなんだと思った。
同時に、丹羽くんは妖精さんじゃなか、男の子じゃないか、そう自分に言い聞かせようとしたけども、俺のなかで、特別な存在だった。
「俺、丹羽くんが好きだよ」
考えがまとまらず、丹羽くんの顔を見ると、いつの間にか、俺はそう言ってしまった。
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