残業、手伝いますっ



「え? あれ、え?」

誰もいないと思っていたオフィスに同い年くらいの青年がいた。
俺は失礼極まりないことに、疑問符を連発した。

そして、極めつけには「誰?」と質問する始末。

最悪だ。
もっと礼儀とか、なんだとか、あるだろうに。
俺は入社して、2年たっても、ろくな言葉遣いができずにいた。
もちろん敬語はただの、です、ます、敬語。

情けなく感じて、すみません、と謝ろうとした。
すると、青年は嬉しそうに笑うと、

「丹羽っていいます」

と答えてくれた。

「丹羽…」

俺は、この会社と同じ名前なんだ、とか、一人、頷いていたら、丹羽くんは、腰を低くして、俺を覗きこんだ。

「実は部長…じゃなくて、すみません。すみません、あの小池さんと呼んでもいいですか?」

「いいよ。小池で。同い年だよね?」

「はい。時間帯で言えばそうかと、思うんですが」

「時間帯?」

俺は首をかしげた。
しばらくして、丹羽くんは此処だけの話ですから、と話し始めた。

「俺、この丹羽株式の妖精なんです」

「妖精さん!?」

俺はすこし、いや、かなり、感動した。
高校の時に、俺の妖精は存在している発言を馬鹿にした、友達を思い出し、今すぐにでも、俺は妖精さんにお会いしてんだぞ、とメールをいれてやりたくなった。

だけど、丹羽くんは「誰にも言わないで下さいね」と説明を始めた。

「俺みたいな妖精は、信じる人にしか、見えないんですよ。そして、信じていても、誰かに、俺は妖精を見たとか、自慢しても、見えなくなってしまうみたいなんです。だから」

「わかった。言わない」

「ありがとうございます」

「や、俺こそ、声かけてくれて、ありがとう。嬉しかった」



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