やりたい放題な…




気分を入れ替えて、俺は何でも頑張れる気がしていた。
だけど、やっぱり無理だった。
辛い。悲しい。さびしい。怖い。逃げたい。
そんなことばかりぐるぐると考えてしまう。
こんなのではダメだ。
そう思ってみたところで、どうしようもない感情に、俺は押しつぶされそうになった。

就業時間が過ぎて、俺はまた、泣いていた。
泣くことに意味なんてないんだけど、泣けば、なんだか、全てを俺の中から外へ出せているような気がしてならなかったからだ。そんな気がする。ただ、それだけが救いな気がする。

やりたい放題な上司。
理不尽なことばかりの職場。

俺、もしかしたら、限界かもしれない。
そう思った時、もう、俺はこの仕事に愛着も何もかもなくしてしまっているんじゃないだろうか?

「はぁ…」

明日も仕事か。
そう思うと嫌になる。
いつも、俺は休みに向かって働いているのに、休みの日はまた仕事に戻らなくていはいきないんだと、怯えてすごす。

何も楽しいことなんてなかった。
もしかしたら、生きていること自体が億劫な気がしてならない。
曖昧すぎる。
こんなのが毎日続くだけの人生なら、もう、俺、充分だと思うんだ。
こんな繰り返しとか、嫌。

夢はとくになかったけど、夢の一つも描けないままに人生を終わらせようとする俺自身にも愛想がつきそうな気がした。

それが、本当に怖いことだと思った。

「何、してんだろ」

「頑張っているんですよ」

「うん。俺、頑張っているよ。でもね、え?」

俺は、いったいどうしたのだろう。
誰もいないはずのオフィスで誰と話しているんだろう。
怖い。お化けかもしれない。
でも、声がした方に振り向かないのも耐えられない。
でも、振り向いたことろにお化けがいたらどうしよう。
俺は二十歳にもなって、足が震えた。

お化けなんて、お化けなんて、怖くない。怖くない。でも、少し怖いかも。
いや、まじで怖い!

俺は一人で震えていると、今度は俺の前から、声がした。
俺と同い年くらいの青年が立っていた。

「あの、はじめまして」

青年はそう言った。
俺は「はじめまして」と返した。

これが、俺と青年の出会いだった。





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