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=小池side=
「だから、何度言ったらわかるんだ!」
「いい加減にしろ!?」
「お前ももう、努めて2年になるんだろ? それぐらい自分で判断しろ!?」
「わからないことはわからないと聞きなさい!」
「2年そこらででしゃばるな!」
……誰もいないオフィスで考えた。
俺はどうしたらいいのかを。
答えはわからない。
ただ、こんなところやめてやる。そう思う。
なのに、俺によくしてくれた進路相談の先生の顔に泥を塗るような行為になってしまう。
どうあれ、あと1年はここで我慢するべきだろう。
で、続けられるなら、いつまでも働いて一人前以上になって、先生に「立派になりました」とお茶菓子持って会いに行きたい。
そんな夢があるから、俺は、がんばれるのかもしれない。
今もなお、頭に残る罵声の数々に泣けてきた。
こんなことで泣いてもしかたないことはわかっていて、なのに、やっぱり辛くて。
誰も味方をしてくれないから、孤独で、不安で。
集団が怖いなんて思ったのは初めてだった。
無関心も怖いことこの上ないけど、も。
「よし、明日の準備したら、帰ろう」
俺は完全に誰もいなくなると独り言を口にする癖ができていた。
きっと、淋しいのだ。
自分で自分に話しかけてしまうくらいに。
何時になったら、この暗がりから抜け出せるのだろう。
俺は明日の用意が終わると、いつも通り、家に帰ろうとした。
「ご苦労様です」
「え?」
タイムカードを押して、職場を後にしようとしたら、どこからか、そんな声がして、俺は驚いた。
だけど、どうやら、誰もいないので、幻聴なんだと思う。
「疲れてんのかな?」
俺は首をかしげながら、その日、自宅に帰った。
いつもなら、寝る前に怖いことを思い出すのに、自然と安らかに眠りにつけたことを、俺は朝になってから実感した。
なんなんだろう。
この気持ちは…
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