3
「過去だとしても、忘れたくないし忘れていいものじゃないだろ」
柏さんは声を絞るようにして言われました。
俺は「いいえ」と首を横に振りました。
俺だってはじめはそう思っていたんです。
過去は過去だとしても、それがあったことにはかわらないし、
犯した罪も消えてなくなるものではないと。
許されるものではないと。
俺の大好きだった孝吉兄さん。
血はつながっていなかったけど、俺のこと大切にしてくれました。
彼が俺の支えだったのです。
ある日、それは一人の恋人のせいで奪われてしまいましたが。
「柏さんは…ずっとそうやって生きていくんですか?」
「……え?」
[*前] | [次#]
目次に戻る→