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「違うよ、俺は健一の苦しみに気がつかなかった。それに、俺は健一に頼られる存在にすらなれていなかった。俺は、これは俺の力のなさだ。俺にもっとこう力があったら、きっと今ごろはこうして二人で桜の木の下にいられたはずなのに…」
遠いなって、君は手を伸ばした。
俺は小さく笑ってやる。
だって、変わらないだろ。
20年もたっても、
君は、
俺至上主義なのかよ。
「…叶っているから、今」
「え?」
「俺とお前がこういして桜の木の下で会いましょうって約束したの、叶っている。今、お前は俺に会いに来てくれた。20年も待ってしまったけど、君は約束を守ってくれた」
「健一っ」
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