…正気はあるのか?
「で、なんで、俺は新藤なんかとご飯食べているんだろう」
学校から近い天丼屋さんで、俺と新藤は顔を合わせた。
実はここ俺のお気に入りのお店。
「植木、お前が話したいことがあると思って、聞いてやるつもりだったんだけど」
「なんで、俺が新藤なんかに話すことがあるっていうんだよ」
「職員室であんな、勘違いされやすそうなこと言ってさ」
「勘違いってどのへんかわからねーよ」
「…どの辺にしても、しないにしても、なんか、俺のことが好きだとか言っているように聞こえたぞ」
「………病院へ言った方がいいぞ」
「俺は、まあ、違うってわかるけど、さ、職員室のあのざわめきどうするんだよ」
別に俺は構わないけど、植木は面倒だろって、新藤は言う。
その冷静は顔が腹立つ。
「なんでいつも新藤はそうやって冷静なんだよ!」
俺が一人でわーわー言っているようで気に食わない。
腹が立つ。
「…植木、俺は冷静か?」
困ったような顔をして、新藤は俺を見つめた。
男前が、そんな情けない顔をすると、可愛いと思う。
きゅんとした自分に焦った。
俺は慌てて頭を机に叩きつけ「まあな」と答えた。
ドキドキしている…
*****
俺はのちに運ばれてきた大好きな天丼の味もよくわからなかった。
黙々と天丼を食べて新藤は「お前がこれ好きなのわかるな」とか何度も頷いた。
どうしよう…
どうしてくれよう、この馬鹿野郎。
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