=乃木side=


羽場とはずっと一緒にいた。
ずっと一緒だった。

羽場のことなら、全て知っていると思っていた。

強がりだとか泣き虫だとか寂しがり屋だとか猫が好きだとか…
玉子は馬鹿みたいに甘いのが好きだとか、目玉焼きにはマヨネーズをかけるのが好きだとか…
背が低いことにコンプレックスはないけど、華奢な体には、いつもコンプレックスを感じているとか…

馬鹿だけど、本当に馬鹿だけど、

誰よりも思いやりのある奴だとか…

嘘つくのが下手だとか…

笑ったら、本当に可愛いとか…

泣いていても、それを隠すのがくせだとか…

ちょっとわかりにくいところもあるけど、悪気なんていつもないってこととか…
知っていたのにな…


俺は羽場の電話を切ると、家を飛び出した。


きっと突き放して
突き放すように見せて待ってくれている。

「あの馬鹿!」

俺じゃなきゃ、わかってもらえなかったぞ。
そう思って、俺は何処かほほえましい気持ちになった。

羽場はわかりやすいようで
わかりにくい奴だってこと、
今、思い出した。






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