突き放すように見せて待ってくれている




=羽場side=


呆気ないものだと思った。
校長にあんなにも簡単に謝られて、俺は、呆気ないものだと思った。
俺はやっと自由になれた気がした。
なのに…


「乃木ぃ〜」

『今、何時だと思っているんだ?』

喪失感につぶされてしまいそうで、怖くなって、乃木に電話をした。

すると、すぐに乃木は電話に出てくれたのに、そうやって、不機嫌な声を出す。

でも、さ、俺はそんなことにめげない。


「まだ8時だって」

『それがお前の言い分か』

「え、だって、まだ……あ、あれ、ちゃ、乃木ぃ」

『どうした?』

「俺ん家の、時計とまってるんだ、今、何時だよ!」

秒針が動いていない時計をみて、俺は焦った。

『ま、そんなことより、どうしたんだ?』

「え?」

『訳もなく電話してきたのか?』

「あ、そのさ、安心したくて…」

『は?』

「俺でも不安になるの! だから、乃木の声が聞きたくなった」

『………羽場、一回、頭を冷やせ』

「なんだよ、その言い方、俺、傷つくぞ!」






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