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いつも、天野は笑ってばかりいると思っていた。
だが、違う。
脳天気じゃない。
「天野はどうして無理に笑うんだ」
「癖です」
「癖?」
「治らないんですよね。これ」
小さいころに父親にそう躾けられて、今もずっとこのままです、と天野は言う。
「俺は笑っているつもりもないんですが、自然と笑っているみたいですね」
楽しそうですか、と天野は俺に問いかけた。
俺は、もう、前みたいに、天野のことが楽しそうだとは思えなかった。
「いや」
「すみません、何だかしんみりしちゃいましたね。でも最後に一つだけ」
「なんだ?」
「俺はこの癖を嫌ってませんよ。これはね、俺のためを思って父がくれたものです。時たま面倒なこともありますが、時たまに愛おしいんです。どんな形であれ、上手に生きていってほしいという、父親のくだらない愛情があふれているような気にもなります」
「そうか…」
「そうですよ、だからね――――…
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