「俺は、校長先生を信じてますよ、というか、疑うことなんて何もないです。俺、貴方には感謝しているんです。確かに怒ったこともありますが、それはそれです。今はもうそんな感情はないですし。それに貴方もずっとそのままじゃなかったですし。それに、ああ、上手く言えないですね…」

気持ちを伝えるのは難しいです、と天野は俯いた。

「簡単に言うと、幹也くんは、校長先生がいてくれたから、生まれてきてくれて、今、も、貴方がここにいてくださるから、俺は、この高校でこんな素敵なものに出会えたんです!」

「……関係ないだろ」

俺がこの学校でしてきたことは…
ただ自分のことだけに必死になる、それだけだった。

「天野が感謝することなんて何もないだろ!」

「だって、この学校は進路にも就職にも有利です。俺、そんな評判に、流されてここに通うことになりました。いえ、流されたと言うのは違いますよね。パンフレットの言葉が好きだったんです。貴方はこう言われてましたよね。学校の名前を汚さない、それが一番大切だ、と」

「だから、どうしたって?」

「大切にしているんだと思いました。学校のこと…とか全部」

「……」

「市原…あ、じゃなくて、幹也くんも、なんだかんだ言っても、ここの高校を選んだんでしょ、自分で」

そういえばそうだった。
ちょっとあの日は嬉しかった。
俺のこと嫌っていると思っていた幹也が俺の学校に来てくれるとか。

本当はずっといつかは幹也が俺の学校にきてくれたらいいと思っていたけど、

そんなことは叶うわけもないと思っていたから。


意外だった。






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