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だけど、さっきの詰め箱の話を聞いていたら、俺は、お手上げだと思った。
「天野、後で、校長室に来なさい」
俺はそう言って、相談室を後にしようとした。
すると、天野は俺の手を引いて、首を振った。
「行かないでください。せっかく、ここに来てくれたんですから、もう少し、ちゃんとお話していきませんか? 羽場も、市原…その、幹也くんもいるんですし…」
「…だが」
今さら何を話すっていうんだろう。
俺は、二人に何をしてきたのか、天野は知らないのだろうか。
「話すことなんてない」
俺は怖くなって天野の手を払い、ここから逃げようとした。
なのに「お父さん」だなんて、
幹也の声がした。
お父さんなんて、
久しぶりに、
呼ばれた。
「…幹也」
ああ、だから、嫌なんだ。
感情なんてみっともない。
溢れた涙はきっと、限りなく、
俺を格好悪くしているだろう。
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