そんな心遣いいりません!
=乃木side=
放課後になり、俺は羽場と教室に残った。
羽場からお昼の話を聞かせてもらうためだ。
ま、だいたいの察しはつくのだけど。
そんなのは仮説だ。
俺は羽場の本当の気持ちが知りたい。
「だから、俺は、それでスパイをしようと思うんだ」
「羽場、天野は気にしないと思うけど」
なんでいつも羽場はそうやって無理をしようとするのだろうか。
俺は心配になって、安全策を考えた。
羽場にはこれ以上、傷ついてほしくない。
「乃木、違う。俺の心の問題なんだ」
「どういう?」
「俺はさ、天野からたくさんのものをもらったと思うんだ。少しでも返すことができたらいいなって思うんだ。だから、今の俺に出来る精いっぱいのことをしたいんだ」
だから、俺はスパイ活動をして、校長の弱みを見つけて、天野の役に立ちたいんだ、
と羽場は言った。
俺は無理をするなとだけ言った。
ああ、情けないことに、これ以上、何も言えない。
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