=植木Side=


教師をやっていて、俺が怒ったことなんて少ない。

最近で言うと校長のことくらいかなって思っていた。


が、俺は今、天野に怒りたい。

いや、これは完全なる嫉妬だ。


「天野、市原から手を放せ、先生からも忠告だ」

「友人その1からも忠告する」

俺が天野に手を放せというと、羽場も勢いよく後に続いた。


「……わかりました」

ふてくされたように天野は言うと市原からようやく手を放した。

市原はしばらく顔をあげなかった。
照れているのか…意識しているのか…
どっちにしても、俺には嬉しくないことだ。


あ、
羽場も乃木も、真城もそういう顔をしている。


「なんだよ、みんなして、その顔は」

天野は脳天気に俺たちを見て言った。
気付いてないのか…

俺たちも市原のこと、好きなんだぞ、天野。


ま、言わないけどね。


天野のためを思うと…ね。

そう、先生は心を鬼にして、だなぁ、
都合の悪いことにはふたをしてあげたんだ。






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