先生は心を鬼にして、だなぁ




=天野side=


隠し事をされるのには慣れていた。
小さいころからよくあったから、

なのに、
こんなにも胸が痛んだのは初めてだった。


でもさ、いつまでも引きずったらいけないと思うんだ。

市原だって羽場だってそりゃ俺に言えないことをいくつか抱えているだろうし。

俺だって100%本音を話しているのかって言われたら、頷けない。


しかたない。


頭ではわかっていても、
心が言うことを聞かない。


それでも俺は市原のことが好きなんだって今、気がついた。

これは完全に友達としての好きじゃないってことにも。

ああ、恋愛感情だ。
これ。



「天野、いいから、そろそろ離れろ!」


真城が市原に抱きついている俺に向かってそう言った。

俺は「嫌だ」と繰り返し、ただ市原を抱きしめていた。


どきどきする。

市原の匂いとか体温とか安心する。
幸せだと思う。

このまま、溶けて消えてしまいたいと考えてしまう。


ああ、どうしよう、愛おしい。






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