3
「え? それで、スパイ活動をするの」
食堂の片隅で僕と羽場くんは向き合ってお昼ご飯を食べていた。
「ああ、だって、じゃないと、天野に悪いし…」
今までたくさん天野の邪魔をしてきたのだと羽場くんは言った。
僕に話しかけたのも、天野くんと仲良くしているみたいだったから、だそう。
でも、それでも、僕は出会えたことに感謝しているよ、羽場くん。
「だから、俺はスパイ活動をしようと思うんだ」
「そんな、天野くん、そんなこと、気にしないと思うよ」
「そうだけど…俺が、気にするから」
「そ、そう」
「わわ、ごめん、市原が悩むことじゃないよ! 俺の問題だし。それにこうして聞いてくれることが嬉しい」
「え?」
「だから、俺は嬉しいんだ。俺のあんな話を聞いても、こうして俺とお昼食べてくれたり、離れていかない市原がいてくれることが、嬉しい」
「僕、何もできていないのに…?」
「市原、俺が嬉しいって言ってんだ。素直に笑ってよ?」
「う、うん」
羽場くんの優しさに、僕は迂闊にもまた泣き出してしまいそうになった。
本当に何もできなくて嫌だったから。
そう言ってもらえたら、少し気持ちが楽になった。
「ありがとう、羽場くん」
「わかってくれたなら、いいよ」
「うん。それでね、話の続きに戻ってもいいかな?」
「ああ」
その後、僕と羽場くんはスパイのための作戦をねった。
[*前] | [次#]
目次に戻る→