「え? それで、スパイ活動をするの」

食堂の片隅で僕と羽場くんは向き合ってお昼ご飯を食べていた。

「ああ、だって、じゃないと、天野に悪いし…」

今までたくさん天野の邪魔をしてきたのだと羽場くんは言った。

僕に話しかけたのも、天野くんと仲良くしているみたいだったから、だそう。

でも、それでも、僕は出会えたことに感謝しているよ、羽場くん。


「だから、俺はスパイ活動をしようと思うんだ」

「そんな、天野くん、そんなこと、気にしないと思うよ」

「そうだけど…俺が、気にするから」

「そ、そう」

「わわ、ごめん、市原が悩むことじゃないよ! 俺の問題だし。それにこうして聞いてくれることが嬉しい」

「え?」

「だから、俺は嬉しいんだ。俺のあんな話を聞いても、こうして俺とお昼食べてくれたり、離れていかない市原がいてくれることが、嬉しい」

「僕、何もできていないのに…?」

「市原、俺が嬉しいって言ってんだ。素直に笑ってよ?」

「う、うん」

羽場くんの優しさに、僕は迂闊にもまた泣き出してしまいそうになった。

本当に何もできなくて嫌だったから。

そう言ってもらえたら、少し気持ちが楽になった。


「ありがとう、羽場くん」

「わかってくれたなら、いいよ」

「うん。それでね、話の続きに戻ってもいいかな?」

「ああ」

その後、僕と羽場くんはスパイのための作戦をねった。






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