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=市原side=
昨日は天野くんの家に泊まらせてもらった。
天野くんのお母さんはとても優しい人で、またおいでって僕に言ってくれた。
嬉しかった。
僕の知らない天野くんをまた知ることができた気がして。
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幸せに浸りながら僕は廊下を歩いていた。
「市原―」
「羽場くん?」
「おう、俺だよー」
元気いっぱいに手を振って笑う羽場くんに僕は昨日のことは夢だったのかもしれないと思った。
だけど、すぐに違うって気がついた。
「どうしたんだよ、市原、急にそんな悲しそうな顔をして…」
羽場くんの近くに立つとわかってしまう。
無理に笑っている…みたい。
だって、だって、
ほほがひきつっている。
足が、体が震えている。
「羽場くん…僕は、羽場くんの味方だから」
僕は力強く羽場くんの手をとった。
「だから、僕の前では無理しないで?」
「……い、ち…市原っ」
「うん、大丈夫だよ」
ぽろぽろと泣きだした羽場くんの肩をたたきながら僕は何度も「大丈夫」とささやいた。
羽場くんはその度に何度も頷いてくれた。
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