さて帰宅部について説明しよう
=天野side=
校長は言った。
市原を巻き込むなと。
校長は俺に言った。
市原から離れろと。
できるわけがないと思った。
弱みを掴んで脅してもいいと思った。
だけど、そこまでして、帰宅部を設立させる意味はなかった。
「乃木、俺、幸せかもしれない」
ありがとうと乃木に伝えたら、俺のほうこそと乃木は言う。
「心配というかなんていうのか、校長を殴りそうになった時、とめてくれて、嬉しかった。俺や羽場のこと思ってくれるの、嬉しかった。まるで、市原みたいな優しさで。屈託のない信頼がそこにはあって」
なんてな、と乃木は照れた顔をして笑った。
そして茶化すように「部屋に戻ろうか、羽場が寂しがっているかもしれない」と二階の方角を見つめた。
「そうだな」
俺は乃木の言葉にうなずくと飲み物を手にして、部屋に帰った。
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