=乃木side=


「馬鹿馬鹿しいってどういうことだ!?」

俺は天野の言葉に反論した。
俺はずっと馬鹿なことをしていると思って見ていた。
でも、直接天野に関わって、わかった。

天野はふざけていない。

真剣に帰宅部っていうものをつくりたいんだなって。

いつも冷めているとか言われる俺だけど、天野のそういった姿勢にはひそかにあこがれていたんだ。

なのに、馬鹿ばかしいってあんまりだ。


「…乃木、ごめん」

「あ…」

寂しい顔、天野がした。
いつも、楽しそうにしている天野が、追いつめられたような、顔をした。

俺は、聞いてはいけないことを聞いたのかもしれない。


「でも、信じていいよね。帰宅部は設立出来なくても、俺たちの間であるって」

天野は顔を伏せた。

「前にも思ったけど、正式じゃなくても、誰にも認めてもらえなくても、存在しなくても、信じていいよね。俺たちは帰宅部のメンバーだよね…?」

「今さら、だ」

俺は天野の頭をはたいた。

「帰宅部がなくても、俺も、羽場も、天野の仲間だ」

「ありがと…」

よかったよ、と顔をあげると天野はいつものように笑っていた。


「それだけなんだ。ちょっと気になってさ。俺だけがその気だったら寂しいじゃん。だから、聞いちゃったんだ。わりぃな」


「ああ」


本当にそうやってすぐに強がるところ、直した方がいいと思うよ、天野。






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