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「で、こちらが俺の家です」
「すっげぇ」
羽場は目をまるくした。
「でかいな」
淡々と乃木は頷いた。
俺は市原を背負いなおすと、門に手をかけようとした。
う、ちょっと、市原を背負っているから、開けにくい。
「天野、そういう時は頼ってくれ」
「乃木ぃ」
スマートに門を開けて、くれた。
こういうのを紳士って言うのかもしれない。
俺は乃木にきゃきゃしている女の子の気持ちがよくわかった気がした。
「ありがとう」
俺は助かったよーと乃木に言ったら、乃木は顔をそらして「別にあたりまえじゃん」と言った。
普段澄ましている顔が少し赤い。
面白い。
「俺、羽場が、何かあったら、乃木ぃ〜っていうのわかるかもしれない」
「なんだよ、それ」
乃木は笑った。
羽場は「俺はそんなに乃木乃木言ってねぇよ」とか言いながら俺の足をける。
「羽場、俺がこけたら、市原はどうなると思ってんだよ」
「あ、ごめんな市原」
「お前、俺にも謝らんかい!」
「えー」
なんでそんなことで謝るんだよ、と羽場は言った。
「まぁ、俺は羽場になら、何されてもいいかな。怒っててないよ。本当に」
今までのこと全て。
今までの、嫌がらせとか、全部。
「な、羽場」
「…っ」
今度は眉間にしわを寄せて羽場はそっぽをむいた。
きっと、泣いているんじゃないだろうか。
そうかそうか、あれはやっぱり羽場がしたくてしたことじゃないのか。
すると、もう、あれだな。
校長が俺のことを本気で嫌っているとしか思えないな。
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