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俺は二人を自分の家に呼んだ。
今、一人にするのは怖かった。
ふとしたら、校長を殴りにいくんじゃないかって、怖かった。
「天野、どうして、とめたんだよ」
羽場がふてくされた顔で聞いてくる。
俺は「だって」と口を開いた。
「だって、さ、もったいない。市原のこと大切に思うのは俺も一緒だけど、あんな人殴っても、市原は喜ばない。殴っても何も解決しない。だったら、自分の感情だけで殴らない方がいい。市原のためを思うなら、なおさら」
「……天野」
お前ただの馬鹿じゃないんだ、と乃木が言う。
俺は乃木にはどんなふうに思われているんだろうな。
「それに…、俺、二人が好きだよ…。だから、損なことしてほしくなかった。いつか、後悔するようなことしてほしくなかった。あ、これは俺の我がままか、わりぃな」
「…悪いよ、天野」
羽場は言った。
「そんなこと言われたら、もう、迂闊に誰も殴れないじゃないか」
「別に殴ることないじゃん、羽場」
「俺が、か?」
「うん。羽場は本当は喧嘩、嫌いだろ?」
「なななん、なんで」
なんで知ってんだよって羽場は叫んだ。
すると乃木は「それは俺も知ってた」と言う。
羽場は本当に顔を真っ赤にして、お前らは馬鹿だ、と言った。
「俺は喧嘩っ早いじゃん、有名じゃん」
「羽場くん、俺、馬鹿だから、人の言うことはよくわからないんだよね」
「ああ、羽場くん、俺も、自分で学んだことしか信じないたちだから、人の言うことわからないんだよね」
ねー、と俺と乃木は声を合わせた。
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