は、はぁいい!?
=天野side=
校長が市原を殴った時、俺はあわてて倒れた市原を起こした。
校長は冷たい目をして、俺たちを見下ろしていた。
背筋が凍えた。
――数時間前――
乃木と、羽場が、思いっきり拳を振りかざして、校長に飛びかかろうとしている。
俺は「やめろ!」と叫んだ。
「暴力は、よくない!」
「…っ」
バンッと自分の足をたたいて、乃木は険しい顔をした。
俺の知っている乃木じゃない。
さっきまであんなにも優しかったのに…
羽場も、無言のまま地面を睨んでいた。
羽場はよく俺に絡んできたり、俺のやりたいことの邪魔をしてきたし、その度に、冷たい目をしていたけど、今は違うんだと思った。
本当に、二人とも、怒っている。
勢いでとめてしまったけど、よかったのだろうか?
「天野くん、全くもってその通りだよね」
校長は嫌な笑顔でそう言った。
さっき、自分は息子を殴ったのに…
何も感じていないような平気な顔をして…
許せないと思った。
はじめて、殺気を覚えた。
「ですよね、暴力はいけないですよね」
俺はなんとかそれだけの言葉を紡ぐと、市原を背負って、羽場と乃木の服を引っ張った。
こんなところに長くいたくはなかった。
乃木も羽場も同じ気持ちなのだろうか。
言葉もなく、俺についてきてくれた。
後ろでは、
「帰宅部の契約書、忘れているけど」
とか、声がした。
俺はそんなもの、どうでもいいと思った。
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