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「ごめん、泣かないでくれよ…泣かしたかったんじゃないんだ…。もっとちゃんとしてから言いたかったんだ。ありがとうって。でも、もう、今でも伝えたくなって、今、伝えたりして…」
「違うよ、違うんだ」
どうしよう、嬉しくて、息がつまりそうだ。
「天野くんは、覚えていないって、僕だけが覚えているのかなって思っていて…だから、嬉しくて…」
「市原、俺ね…」
「何?」
「俺ね、もう、我がまま言わないから、さ…そばにいてほしいんだ。友達で、いてほしいんだ」
「天野くん…泣いてる…?」
声の震えから僕はそう思って、
振りむこうとしたら、
もっと強く抱きしめられて、
それができない。
「いやだな、泣くわけないじゃん」
「でも…」
「泣いていないよ、そういうことにしてくれ…」
「う、うん」
「ありがとう、市原」
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