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『あ、ごめん、こんな話。ちょっと、市原が優しいく、聞いてくれるから、つい言っちゃったな。返事とか、何もいらないよ。聞いてくれてありがとう。俺、後。もう二つ、悩み事あるんだけど、もう、大丈夫かもしれない』
『逃げていたけど、こうして話したら、心の整理がついたよ!』
な、大丈夫だ、と言って、羽場くんは笑った。
その時、頬に、少し、違和感があった。
『あ、これ、この傷跡はそん時のだよ。もう、だいぶ、消えてきていて、見えにくくなったんだけどなー』
まだ見えてしまうのか、男前が台無しだよねって、羽場くんは笑った。
僕は言った。
ただ一言だけ。
『羽場くん、様になっていて、格好いいよ』と。
不謹慎だとは思った。
だけど、本当に、否定はしたくなかった。
その傷跡も全ては羽場くんの背負ってきてものじゃないだろうか。
じゃあ、やすやすとそうやって、否定したら、寂しい。
『市原、俺ね』
好きだよって羽場くんは口にして笑った。
だから、僕もだよって、僕も笑った。
『ありがとう、片づけてくる』
そう言い残して羽場くんは何処かへ言ってしまった。
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