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「ところで、乃木くんと天野くんだね?」
「「はい」」
「頼みたいことがあるんだが…」
「何でも言ってください」
天野は躊躇もなく、あっさりと頷いた。
「なぁ、幹也、元気にしているのか…。変わったこととか、変な奴に何かされそうになっていないか!?」
立ちあがると校長は叫ぶようにそう言った。
「心配なんだ、幹也は可愛いから、天使のようにかわいいから、変なことに巻き込まれていないか!」
しいていうなら、帰宅部を作ろうとかいう変な集団に巻き込まれています。
「本当に心配でさ、俺もいろいろしてんだがさ、俺って校長じゃん。やれることとできないことがあるんだよ」
嫌になるよ、と校長は座りなおした。
「そんなにも、市原のことを思ってらっしゃるんですね?」
天野は愛おしそうに校長に笑いかけた。
およそ10分前に足を引っ掛けてこかした奴と同じ人間だとか信じがたい。
「そうなんだ、なのに、なのに、幹也は…俺のこの気持ちをわかってくれないんだ」
「そうなんですか?」
「そうなんだよ、天野くん、君話したら、わかる奴じゃないか…」
「そんな、恐縮です」
「恐縮だとか、いらないよ、天野くん」
「いえいえ、だって…」
俺は、天野と校長の掛け合いを聞きながら、天野はいつもテキトーに楽しいことしか考えていないのかと、思っていた自分を恥じた。
天野はこんなにも、同情心に熱く、実は人思いな奴だったんだ。
おいおい、と話す校長の話をずっと上手に聞いていた。
普段から、そうしていたらいいのに、天野。
ま、俺は破天荒の方が好きだけど。
ああ、コーヒーが冷めてしまっている…
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