げ、芸術だ…。
「なな、な、見て、俺って才能あるよ」
すっごくベストショットだと言いながら、天野は嬉しそうにデジカメの写真を見せてくる。
うん、いいショットだ。
「……ああ、そうだな。よかったな」
「乃木、元気ないよ、俺がこんなにも頑張ったのに! てかさ、ここ見て、これ、このカツラのズレ具合が最高だよな。俺って芸術センスがあるのかもしれないなぁ。な、乃木、本当にやったよ、俺、な、乃木、乃木ってば」
もっと喜べよ、と天野は俺に言う。
しかし、天野は気が付いていないようだ。
校長先生、めちゃくちゃ、顔をしかめている。
コワイ…
本当に、あの天然の市原の父親かこの人。
「君たち、ちょっと、こっちに座りなさい」
校長は完全に怒っていた。
俺は今すぐにでもあの窓からばっくれようと考えたが、天野を置いて行くのは気が引けた。
「はい、今すぐに契約書にサインくださるんですね!」
天野は嬉しそうに校長に言われたとおりに座る。
俺もしぶしぶと座る。
すると、校長は簡単に天野が出した契約書にサインをした。
「幹也をよろしく頼む」
「はい!」
この時、帰宅部は立派な部活動の一つとして、認められた。
しかし、俺たちは何も考えていなかった。
ただ校長が認めてくれたことで頭がいっぱいだった。
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