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=真城side=
正直市原は、みんなのものだった。
自分だけのものにならなくてもいいと思っていた。
だって、市原はみんなに平等だった。
だから余計なことをしたら自分だけがその列から消えてしまうのではないかって何処かで不安を抱えていた。
けど、天野と出会ってからの市原は、違った。
同中だった俺も含め、みんなそうだと思うけど、期待してしまうんじゃないだろうか。
自分も何かしらがんばったら、天野みたいに少し前に出られるんじゃないかって。
それに、俺たちがこんなにお互いにぴりぴりと喧嘩していても、そのすきに、天野にもっていかれるかもしれないような、恐怖もあって。
気が付いたら、俺たちは、市原を守るというよりも、自分こそが近づける方法を考えてしまっている。
もう、ダメだと思う。
この先、この波は終わらないと思う。
でも、俺にとっても、
だからこその挑戦であり希望。
昨日告白して振られた男子の気持ちも俺にはわかる。
わかるけど、俺は絶対にしくじったりはしない。
なぁ、そうだろ。
「羽場、乃木」
俺は二人にそれぞれ握手を要求した。
「は…」
乃木は嫌そうな顔をして、俺を睨んだ。
羽場はそんな乃木に、握手くらい、いいだろって言ってくれている。
「わかった、今回だけだからな」
乃木はしぶしぶと俺に手を出した。
羽場はにこにことしながら、手を出した。
「これからも、よろしくな!」
負けないけど、同じ仲間として…
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