=天野side=


どうして市原が、謝るのだろう。
俺の勝手な独占欲で、傷つけたというのに。

どうして市原が、泣いているのだろう。
俺はどうしたらいいのだろう。


俺は…


もどかしい。

もどかしい。

泣かせたいわけじゃなかったのに、

どうして、俺は市原を泣かしているのだろう。


「市原、顔、あげて」

君が気にすることなんて何もないんだよ。

「……これからも、俺と仲良くしてくれないかな、市原…」

「え、いいの?」

「いいっていうか、その、俺がお願いしているんだけど…」


「天野くん、ありがとう…」


「……っ」

急に見上げた市原がとても可愛く笑った。

それが、胸の中に、熱い何かを生んだ。
この感情は何なのだろう。

ずっと、市原を見ていたら、胸の中がきゅっとなる。


「これからもよろしくね」

明るく、君はそう言って、俺の方へと手を出してきた。
俺はその手を取った。


ただの握手だけど、

だけど、

市原の体温に触れて、泣き出したいような気持ちになった。


「……?」

市原は、俺の反応に不思議がっているのだろうな。
言葉にはしなかったけど、市原は、首をかしげていた。


俺はただこの想いについて、ちょっと考えた。


「…あ」

市原のむこうで
真城がこっちを睨んでいた。


俺は負けじと睨みかえした。






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