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=神崎side=
「えーって、感じですよ!」
いつの間にやら完全に状況を把握していた、女性社員はぶーぶー文句を口にした。
「若いもんにはわかんないだろうね」
俺はしみじみと呟いた。
「それでいいんですか? 課長! 私としては部長には丹羽くんとくっついてほしいですけど、課長には邪魔して頂きたいんです」
「……なんだよ。それっ。てか、お前な、同じ神崎だからって、勝手に人の妹だなんて言うなよ。俺は一人っ子なんだからな」
小池に妹さん可愛いねって言われて驚いたんだからな。
「つれないです。楽しくないです。まだ娘を名乗らなかったことを評価してほしいです。てか、もう、課長のこと、調べるの飽きました。同棲くらいしてたらいいのに」
「なんだよ。その自分勝手さは」
「生まれつきです。これ、ずっとです」
「嫌なガキだったんだな?」
「そうですね。いろいろ危ないガキでしたね」
「と、言うか、お前、いつから、気付いてたんだ?」
「何がです?」
「俺が小池を好きだって」
「ああ。覚えてませんか? カレー成人って店」
……俺は考えた。そんな怪しげな店、知らないと思うが。
「ほら、入社してまもないころです。はじめてあなたが小池部長に声をかけて、相席した店」
「あ、あそこかっ。……て、なんで?」
「私のおじさんのお店でした。もうないですけど。当時、私は三歳で、看板娘だねって小池部長は私の頭を撫でてくださったんです」
キラキラと彼女は語る。
「ずっとあのころから、私は小池部長が好きなんです。だから、わかるんですよ。神崎課長の気持ちも、丹羽くんの気持ちも」
「……気付かなかった。ただのへんな女だと思ってた」
「そうですか? 課長には言われたくないですけど。てか、なんで踏み出したのに引き下がるんですか?」
信じられない。と、彼女は呟いた。
だから、俺は言ってやった。
「丹羽に聞けばわかるよ。俺もあいつと同じ理由だし」
つまり、そういうこと。
俺は彼女に笑ってみせた。
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