3
足は軽やかに、何を目指していたんだろう。
俺が、最後の一歩を踏み出した時のことだった。
「健一っ!」
「え?」
何か、強い力で引っ張られた気がした。
「いっ!」
俺は、どうしてか、線路とは別の方向のホームの壁にぶつけられた。
思いっきり、背中を打ったのにも関わらず、痛みもわからなかった。
何もわからなかった。
ただ。ざわめきだしたホームで、君がぐちょぐちゃになっていることだけが、
今も、脳裏に焼き付いている。
人が電車にはねられた時、音は、どかん、ではないのだと俺はその日、初めて知った。
同時に、自分の浅はかさも、その日、初めて知った。
取り返しのつかないことをしてしまったんだと感じている。
俺は…
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