冷たい雨風に当たりながら、俺は駅のホームから踏み出そうとしていた。

一歩一歩が現実味を伴っていなかった。

まるで、ここに俺が存在するように、何の実感もなかったんだ。

だから、怖くも何ともなかった。



怖くなんてなかった。


『まもなく2番線を、電車が通過いたします。黄色い線の内側にお下がり…』

聞きなれた構内放送に、俺は、また一歩を踏み出した。

職場に行きたくなかった。


ここに生きていたくなかった。





[*前] | [次#]
目次に戻る→


「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -