2
冷たい雨風に当たりながら、俺は駅のホームから踏み出そうとしていた。
一歩一歩が現実味を伴っていなかった。
まるで、ここに俺が存在するように、何の実感もなかったんだ。
だから、怖くも何ともなかった。
怖くなんてなかった。
『まもなく2番線を、電車が通過いたします。黄色い線の内側にお下がり…』
聞きなれた構内放送に、俺は、また一歩を踏み出した。
職場に行きたくなかった。
ここに生きていたくなかった。
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