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どうしたらいいんだ。
わかんない。
「小池部長? 大丈夫ですか?」
俺が頭を抱えていたら、神崎になついている女の子が、心配そうにそう尋ねてきた。
そう。今は仕事中。
あの時、俺は逃げ出した。
神崎からも丹羽からも。自分からも。
「悪い。少し、気分がすぐれないらしい」
「やだな。恋ですか?」
「いや、俺は違う」
「えー、どう違うんですか? あ、わかった告白されたんでしょ?」
キャーと女の子は叫んだ。
「違う。そんなことじゃ」
「誰にも言わないから。こっそり教えて下さいよ?」
「あのな…」
俺は女の子の名前を呼ぼうとして、名札を見た。
「あれ、神崎? え?」
同期の友人と同じ。神崎。
いや、別の神崎さんかもしれないし。
うーん。
「ですよ。いつもお兄さんがお世話になっております」
ぺこりと一礼。
そうか。あいつの妹か。
どうりで、神崎と仲がいいんだな。
と、いうか、言われてみればどこと無く似ているな。
特に鼻筋なんてまんまだ。
だが、今、戯れている暇はない。
「えと、神崎さん。今は、仕事中なんだから、仕事しようね」
「はい。ですが、気になって仕事になりません。ですから教えて下さい」
「…ぇ?」
「部長は、丹羽くんに告白されたんですか? それとも兄さんですか?」
かわいらしく神崎妹は俺を見つめた。
言えるわけがない。
両方だなんて。
『神崎? どうした、急に』
嘘だよ冗談だよって、神崎はすぐに笑ってくれると俺は信じた。
だが、神崎は『好きだよ』を繰り返す。
『………何言ってんの。神崎も丹羽も。俺、そういう冗談は嫌いだよ』
真剣な眼をする二人に俺は別れを告げた。
遠回しに、俺はいやな奴作戦を実行した。
そしたら丹羽が
『俺が、全然、ガキだから?』
そう叫んだ。
今にも、泣き出してしまいそうな顔をして。
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