紙面上の約束なんかもういらない




=市原side=


相談室に引きずり込まれて、天野くんが真剣に僕を見つめて、何でもないんだとか言って、それから笑ってくれて、でも、それがいつもの笑顔と違って、僕は不安になる。
本当に僕は何かしてしまっただろうか。

「あの、天野くん」

僕はずっと僕の肩を掴んで話さない天野くんを見上げた。

「あ、悪い」

ごめんな。
と、天野くんは僕から離れた。

沈黙が下りた。

僕は何か言葉を探した。
探した。

そしてついには何もわからなくなって、植木先生にでも話を振ろうとしたら、気がついた。
相談室には天野くんと僕しかいない。
でも、さっき、確かに、天野くんは「一緒にしないでくれ!」と言っていたはずだ。

「あれ、一人だったの? さっき、一緒にしないでくれって言ってなかった?」

僕は聞いた。気になったから、つい、今の状況とか考えずに聞いた。
天野くんは少ししてから、

「植木に呼ばれてたんだ。だから、今度こそは俺、ちゃんと奴を任せるように、イメトレしてて、さ」

「そうなんだ」





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