叫びながら走り去るあなた




羽場くんがフリーズした。

僕は大丈夫って聞いてみたんだけど、羽場くんはただ、フリーズしていた。


しばらくして、


「違う、そうじゃないんだぁぁあ!」

と、羽場くんは叫びながら走り去った。
僕は状況がわからずに、立ち尽くした。
さっきまで、近くにあった羽場くんの吐息を思い出しながら、羽場くんって人に至近距離で話す人なんだな、とか、思っていた。

「市原?」

「へ?」

天野くんの声がして、僕は振り返る。
そこには相談室から顔を出す、天野くんがいた。

なんか、深刻そうな顔をしている。


「帰宅部って、そんなにも深刻なの?」

僕は天野くんを見上げた。
すると、そっけなく目線をそらされた。

何か、僕、気に障ることしたかな?


そう、不安になっていた時だった。
思いっきり、天野くんに腕をとられて、そのまま、相談室に引きずりこまれた。


「あ、天野くん?」

「さっき、羽場といた?」

「え、いたけど?」

だからどうしたのかなって、僕は思った。


「何を話していたんだ?」

天野くんは僕の肩をつかむと、必死にそう聞いてきた。
もしかして、天野くんもヤキモチ焼いているのかな。
羽場くんと僕が仲良くしていたら、嫌なのかな。
そんなにも羽場くんと仲いいのかな。

だったら、僕は気に食わない。


「別に」

僕は天野くんから瞳をそらした。

わかってるのに、
わかってるのに、
僕は、僕以外の誰かのことを天野くんが思うのがおもしろくなかった。

不快だった。


最低。いつから、こんな人間になってしまったんだろ。





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