ああ、それが原因ね
あ、家についちゃった。
「じゃあ、ここが僕の家だから、そのありがとう」
ここでお別れするのは少しさびしい。
それに、僕、天野くんともっと一緒にいたい。
「あ、そうだ。せっかくだから、お茶でも出そうか?」
僕は聞いた。
天野くんはすぐに「お言葉に甘えます」と言って、笑う。
リビングのソファに座り、僕たちは麦茶を前に語っていた。
話の内容は「帰宅部について」なのが少しばかり残念だけど。
「でも、俺、市原がこんなにも話せる相手だと思わなかったよ。市原って、いつもなんか、周りと壁つくっていたからさ」
しばらく帰宅部について話した後で、天野くんは僕を真っすぐ見つめた。
ドキドキと鼓動が速くなる。
「これからも、こんな俺だけど、よろしくな! 迷惑はかけないようにするし、友達になってほしい。俺、市原が好きだから」
キラキラした瞳が、照れくさいのか、かすかに震えている。
綺麗だった。
僕はただ頷いただけだったけど、完全に天野くんに惹かれていた。
この時はまだ、憧れだとか、そんな感情だとばかり思っていたのだけど。
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