俺は真面目に帰宅部やりたいんだ
「いちお、早退しなさい」と保健室の先生は僕に言った。
僕はお言葉に甘えます、と学校を後にしたのだけども、
なぜか、天野くんも一緒に帰ることになっていた。
「あの、天野くん」
僕はこの状況をいまいち飲み込めない。
「わり、俺、心配でついてきちゃって」
迷惑だったか、なんて言われてら、そんなことない、としか答えられなかった。
「俺は真面目に帰宅部をしたいんだ」
それは、僕の家が見えてきた頃の出来事だった。
相変わらず、瞳をキラキラさせている天野くんに僕は見とれた。
「帰宅部って、やっぱ、部活動であるべきだと思うんだ」
「そうなの?」
「ああ、そうさ。設立できたら、市原、見学に来いよ。特別にいろんなこと教えてやるから」
「考えておくよ」
特別…という言葉は、案外、ずるい。
僕をこんなにも嬉しくさせ、そのまま置き去りにするのだから。
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