違うんだ
「違うんだ」
それは授業中に起こった。
急に席を立ち上がると、天野くんはつぶやいた。
「違うんだ。俺はこんな青春望んでいない」
悲鳴のように、天野くんは言い捨てて、教室から飛び出してしまった。
先生は「待ちなさい」の一言も言う暇を与えてもらえず、傲然としていた。
「ちょっと、様子、見てきます」
僕はそう言い残して、委員長というものも役に立つじゃないかと考えたりもした。
まだ、授業中の廊下は静かで、少し怖い。
怖い。
「ダメだ。くらくら、してきた」
視界がかすむ。
馬鹿だ。忘れていただなんて。ありえない。
ほんと、僕って、何しても、ダメなやつ。
貧血が…
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