元気を無くしたあなた




屋上に辿りついた時には、もう、僕は心臓バクバクだった。

「あ、わり」

天野くんはただ見つめていた僕の手を放すと謝った。

「なんで?」

僕は尋ねた。
天野くんが謝る理由がわからない。

「なんで、天野くんが謝るの?」

「だって、思いっ切り、無理やり、連れてきただろ」

「そんなことない」

振り払わずにいたのはきっと嫌じゃなかったからだ。
本当は嬉しくて仕方なかった、と言えば、天野くんはどう思うだろうか。

「ありがとう」

僕はただそれだけ言って笑った。

「馬鹿っ!」

「え?」

「あ、何でもない」

「天野くん?」

その日、君は何でもないを繰り返した。
僕はなんだかよくわからなかったけど、幸せだったのかもしれない。





[*前] | [次#]
目次に戻る→


「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -