そうだったのか…?
「帰宅部なんて部活はない」
そう言って、相談室に入ってきたのは、羽場くんだった。
「話はすべて、聞かせてもらった」
「は、ちょっ、羽場?」
天野くんは思いっきり驚いた顔をしていた。
「……」
ちょっと、腹がたった。
いやしかたないことなんだけど、なんか、天野くんに裏切られた気がした。
意味がわからないと、自分自身にかえして、僕はただの学級委員長で、天野くんと親しいわけではなかったことを思い出す。
淋しくなった。
「あれ、委員長だ」
「へ?」
羽場くんは突然、僕のほうをじっと見つめると、二コリと笑った。
「何してんの? こんなところで?」
「え、と。聞いていたんじゃないの?」
だんだんと近づいてくる羽場くんと距離をはかりながら、僕は答えた。
こう見えて、僕は人間恐怖症に近いものを持っている。
だから、いきなり至近距離にもってこられると辛い。
せめてもの距離感は大切だと思う。
親しきなかにも礼儀あり。みたいな感じだ。
だけど、近づかないで、なんて言えない。
「近づくんじゃねーよ」
天野くんは僕の手を引いて、自分の後ろに僕を隠すように導いた。
突然のことに、僕は茫然としていた。
「何? 天野、ヤキモチ?」
羽場くんはニタニタと笑った。
「ふざけんな! 見境なしが!」
天野くんは怒鳴った。
そして、僕の手を引いたまま、相談室を後にした。
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